万物ラジオ「コンセント」〜左右の穴の大きさ、実は違うんです〜#2

万物ラジオ「コンセント」〜左右の穴の大きさ、実は違うんです〜#2

image ** 都築怜: 読むラジオ『万物ラジオ』、パーソナリティの都築怜です。

私たちの部屋の壁には、必ずと言っていいほど、小さな穴が二つ、静かに並んでいます。 スマートフォンを充電する時、ドライヤーを使う時、テレビを見る時…。 私たちは、そこにプラグを差し込むことで、電気という現代の魔法の恩恵を受けています。

まるで、空気や水のように、当たり前に存在しすぎて、その形や役割を、深く考えることはありません。

でも、彼女は、いつもそこにいて、私たちの生活を、ただ静かに見つめています。 文句も言わず、私たちのあらゆる要求に応え、エネルギーを供給し続けてくれる、その存在。

今夜は、そんな家庭内の最も身近なインフラであり、静かなるエネルギーの供給者にご登場いただきます。 壁の向こう側から、私たちの暮らしを見守る、この方です。

コンセントの左右の穴の大きさ、実は違う?

image ** 都築: コンセントさん、今夜はよろしくお願いします。

コンセントの巫女: ……。こちらこそ。 壁のこちら側から、お話しするのは、初めての経験です。

都築: ありがとうございます。僕たちは、あなたの存在を当たり前のように感じていますが、今日はその奥にある声を聞きたくて。…早速ですが、単刀直入にお伺いしてもよろしいでしょうか。

コンセントの巫女: ええ、なんなりと。

都築: 僕、今日、この対談の前に、生まれて初めて、あなたの顔をじっと見てみたんです。それで、気づきました。

コンセントの巫女: …気づかれましたか。私の二つの穴の大きさが、左右で違うことに。

都築: はい!そうなんです!左の穴の方が、右よりほんの少しだけ、長い。今まで何千回、何万回と見てきたはずなのに、全く意識したことがありませんでした。これには、何か理由があるんですか?

コンセントの巫女: ええ。もちろんです。そのわずかな差にこそ、あなた方人間を、目に見えぬ危険から守るための、古からの知恵が込められているのです。

都築: 危険から守るための、知恵…?

コンセントの巫女: まず、右の短い穴。こちらには、電気が流れてくる「電圧側」の線が繋がっています。

都築: 電圧側…。

コンセントの巫女: そして、左の長い穴。こちらは、役目を終えた電気が帰っていく「中性側」、あるいは「接地(せっち)側」の線が繋がっています。

都築: 電気が来る方と、帰る方…。なるほど、役割が違うんですね。

コンセントの巫女: はい。そして、ここからが重要です。プラグを差し込む時、あるいは抜く時。万が一、危険な「電圧側」だけが先に触れてしまうと、漏電や感電の危険性が高まります。

都築: たしかに、それは危ないですね…。

コンセントの巫女: ですから、安全な「中性側」である左の穴を少しだけ長くしておくのです。そうすれば、プラグを差し込む時は安全な方が先に繋がり、抜く時は危険な方が先に離れる。そのように、順序が保たれるのです。

都築: すごい…!たった1ミリほどの差に、そんなにも深い安全思想が…。全く知りませんでした。

世界で違う、いろんなコンセントの形

image ** 都築: 日本のコンセントに、そんな意味があったとは…。ということは、この形は世界共通なんですか?海外のホテルとかでも、同じように使えるものなんでしょうか。

コンセントの巫女: いいえ。私のこの形(Aタイプ)は、日本や北米などで使われているに過ぎません。世界に目を向ければ、国や地域によって、私とは全く異なる姿、異なる思想を持つ仲間たちが、それぞれの役目を果たしています。

都づき: そうなんですね!例えば、どんな仲間たちがいるんですか?

コンセントの巫女: 例えば、英国(イギリス)の仲間(Gタイプ)は、三つの四角い穴を持つ、非常に屈強な姿をしています。プラグの一つひとつにヒューズを内蔵するなど、安全性においては世界で最も厳格な思想を持つ一族です。

都築: プラグにヒューズが…。徹底していますね。

コンセントの巫女: ヨーロッパの多くの国では、二つの丸い穴を持つ仲間(CタイプやFタイプ)が主流です。彼女たちは、機能的で、様々な国のプラグを柔軟に受け入れる、懐の深さを持っています。

都築: 国によって、性格まで違うように聞こえて、面白いです。

コンセントの巫女: ええ。それぞれの土地の電圧や安全基準、歴史によって、私たちの形は定められているのです。だからこそ、あなた方が旅をする際には、私たち仲間同士の言葉を「通訳」するための、「変換プラグ」が必要となるのです。

都築: 変換プラグは、コンセントたちの通訳だったんですね…。ただの形合わせだと思っていました。国の数だけ、コンセントの文化がある…。

あなたの家のコンセント、大丈夫?

image ** コンセントの巫女: ええ。…しかし、世界の仲間を語る前に、まずはご自身の足元、あなたのお部屋にいる私のことから、正しく知っていただかなくてはなりません。

都築: 僕が、知るべきこと…ですか。

コンセントの巫女: 都築さん。あなたの部屋の、テレビの裏や、机の下にいる私の顔を、最後に見たのはいつですか?

都築: え…?言われてみれば、もう何年も見ていないかもしれません…。

コンセントの巫女: ホコリは、湿気を吸います。そして湿気を吸ったホコリは、電気を通しやすくなる。その結果、プラグとの間で火花が散り、火災を招くのです。これを「トラッキング火災」と呼びます。時々は、乾いた布で、私の顔を清めていただきたいのです。

都築: トラッキング火災…。はい、肝に銘じます。

コンセントの巫女: そして、もう一つ。一つの口から、いくつもの電気を求める「タコ足配線」。あれは、私に許容量を超える労働を強いる行いです。私自身が熱を持つだけでなく、家の配線そのものに負荷をかけ、より大きな災いを招くこともあります。…おやめなさい。

都築: はい…。耳が痛いですが、僕たちの安全のための、心からの言葉だと受け止めました。本当に、ありがとうございます。

感想戦

都築: コンセントの巫女様の、静かですが、とても重い言葉が、今も心に残っています。

たった1cmほどの穴の違いに込められた、私たちの安全を守るための、先人たちの深い配慮。そして、ホコリやタコ足配線といった、日々の小さな無頓着が、大きな危険に繋がりかねないという、厳かな警告。

彼女は、ただの便利な穴ではありませんでした。私たちの暮らしの安全を、壁の向こう側から、ただ静かに、じっと見守り続けている、守り神のような存在だったのです。

家に帰ったら、まず壁のコンセントに「いつもありがとう」と、心の中で挨拶をしてしまいそうです。そして、そっと、ホコリを拭ってあげようと思います。

今日のまなび

▼トラッキング火災とは?

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元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/ne32218d9cb40 公開日: 2025-08-04 18:44

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