万物ラジオ「パスポート」: この手帳は、スパイ映画より面白い #8

万物ラジオ「パスポート」: この手帳は、スパイ映画より面白い #8

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【✅ まずは、光にかざしてくれたまえ】

都築: パスポートさん、今夜はよろしくお願いします。あなたのその重厚な秘密、お聞かせいただけますか?

パスポート: 秘密、ではない。国家が定めた、正規の仕様だ。だが、君のような一般市民が、その全てを知る必要はない。

都築: そうおっしゃらずに…。例えば、この手帳、見た目は普通の紙とインクでできているように見えますが、何か特別なことが?

パスポート: フッ…それが、素人が欺かれる、最初の罠だ。都築君、私の査証(ビザ)ページを一枚、光にかざしてくれたまえ。

都築: 光に、ですか?…あ!すごい!ただのページだと思っていたのに、光に透かすと、桜の模様が浮かび上がってきます!

image https://ontrip.jal.co.jp/people/17347757 パスポート: それは「透かし」だ。製紙の段階で、特殊な技術を用いて意図的に厚みの濃淡を作り、絵柄を埋め込んである。通常の印刷では、この立体的な表現を再現することは極めて困難だ。

都築: お札に入っている技術と同じですね…。

パスポート: その通り。紙そのものが、偽造を防ぐための第一関門となっている。だが、こんなものは、ほんの序の口に過ぎない。

【✅ ブラックライトが暴き出す、もう一つの顔】

都築: 序の口…。可視光線、つまり、目に見える光での防御だけではない、ということですか?

パスポート: その通り。本当のセキュリティは、不可視の領域にこそ存在する。ここに、特殊な紫外線を照射するペン…通称ブラックライトがある。これで私のページを照らしてみたまえ。

image https://tabizine.jp/2019/06/18/267556/ 都築: はい…。うわっ、すごい!なんですかこれ!パスポート中央の紋章(五七の桐)が、鮮やかに光って浮かび上がってきました!それに、紙の中に、赤い糸くずのようなものが、あちこちで光っています…!

パスポート: それが、紫外線にのみ反応する「特殊発光インク」と、製紙の段階で漉き込まれた「発光繊維」だ。これらは、高性能なカラースキャナでも複製することはできない。

都築: 紙やインクそのものに、罠が…。

パスポート: まだある。君の肉眼ではただの線にしか見えないだろうが、私の顔写真の周囲にある罫線を、このルーペで見てみるといい。

都つき: ルーペで…。こ、これは…!線じゃなくて、文字だ!めちゃくちゃ小さな文字で、何度も「JAPAN」と書かれています!

パスポート: 「マイクロ文字」。これも、コピー機ではただの線として潰れてしまう、古典的だが極めて有効な技術だ。

【✅ 私の記憶は、電子の砦に守られている】

パスポート: 物理的な偽造対策は、いわば城壁だ。だが、現代の戦いは、電子の世界でも行われている。

都築: 電子の世界…というと、やはり、この表紙に埋め込まれているという「ICチップ」のことですか?

image https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88 パスポート: いかにも。私の「心臓部」だ。そのチップの中には、君の顔写真のデータや、国籍、氏名といった情報が、電子的に記録されている。

都築: それを、空港のゲートで読み取っているんですね。でも、それって、悪い人にデータを盗み見られたりしないんですか?

パスポート: 甘く見るな。チップへのアクセスには、まず、写真ページの最下部にある、あの二行の文字列(機械読み取り領域)を読み取る必要がある。それが、最初のパスワードだ。

都築: あの文字列が、パスワード…!

パスポート: さらに、全てのデータは国際基準の高度な「暗号技術」で固く守られている。不正な読み取り(スキミング)を試みれば、それを検知し、通信を遮断する機能も備えている。この電子の砦を破ることは、事実上、不可能だ。

都築: 紙とインクのアナログな罠から、最先端のデジタルの砦まで…。一冊の手帳に、これほどの技術と執念が…。

パスポート: 私の任務は、君が君であることを、世界に対して証明すること。その信頼が、国家の信頼なのだ。

都築: …パスポートさん、今夜は本当に、ありがとうございました。

【✅ おわりに】

都築: インテリジェンス・オフィサー、「パスポート」さんの声が、まだ耳に残っています。

光に透かすと浮かび上がる桜。ブラックライトにだけ反応するインク。そして、電子の砦であるICチップ。 ただの旅行書類だと思っていたあの手帳は、国家の技術と威信が詰め込まれた、最高機密の塊でした。

次に海外へ行く時、私はきっと、今までとは全く違う気持ちで、この小さな手帳を握りしめるでしょう。 これは、ただの身分証ではない。私という人間の、そして、日本という国家の「信頼」そのものを、静かに、しかし力強く、体現している存在なのだと。

【✅ 今日の雑学まとめ】

ICチップが搭載されたパスポートの正式名称は「IC旅券」。表紙に長方形と丸が描かれた、世界共通のICマークがついている。

パスポートの表紙の色は慣例で分かれている。紺色は「一般旅券」で、赤色は「公用旅券」、外交官などが使う「外交旅券」は濃茶色。

写真ページ下部の2行の文字列は「MRZ(機械読み取り領域)」。名前や国籍などがコード化されており、ICチップのロックを解除する鍵の役割も果たす。

ICパスポートは精密な電子機器。強い衝撃を与えたり、磁気の強い場所に置いたり、ページを折り曲げたりすると、ICチップが破損する恐れがあるため、扱いには注意が必要。


元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/n52150b619597 公開日: 2025-08-07 23:00

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