万物ラジオ「ファスナー」: 自然に開かない、その巧妙な仕組み #3
万物ラジオ「ファスナー」: 自然に開かない、その巧妙な仕組み #3
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都築 怜: 『万物ラジオ』、パーソナリティの都築怜です。今夜のゲストは「ファスナー」です。 ジッパーとかチャックとか呼ばれる、彼ですね。当たり前すぎる存在ですが、そこには驚くほど巧妙な「工学の奇跡」が詰め込まれているようです。今夜は、その奇跡のメカニズムをご本人に、たっぷりと解説していただきましょう。
ファスナーの仕組み
都築: ファスナーさん、今夜はよろしくお願いします。あなたのその完璧な仕組み、ずっと気になっていました。
ファスナー: フッ。当然だろうね。私の体は、数学的な合理性と、物理法則に則って、1ミリの無駄もなく設計されているのだから。君が気付いたのは、正しい。
都築: ありがとうございます。では早速…その、ギザギザの部分、エレメントでしたっけ。あれが、スライダーを動かすだけで、なぜあんなに綺麗に、そして強く噛み合うんでしょうか?
ファスナー: 良い質問だ。鍵は二つある。一つは、エレメント一つひとつの「形状」だ。
都築: 形状、ですか。
ファスナー: よく見ると、エレメントの片側には凸型の「頭」が、もう片側には凹型の「受け口」がある。これが、パズルのピースのように、隣のエレメントと寸分の狂いもなく組み合わさるように設計されている。
都築: なるほど…。
ファスナー: そして、もう一つの鍵が、君が言う「スライダー」だ。スライダーの内部は、単純なトンネルではない。入り口が二股に分かれ、出口が一つになった「Y字」のレールになっている。このレールが、左右のエレメントを正確な角度とタイミングで導き、お互いの頭と受け口を、寸分の狂いもなく「嵌合(かんごう)」させるのだよ。
ファスナーはどうして簡単に開け閉めできるの? | おしごとはくぶつかん
都築: Y字のレールが、エレメントを導いて…。シンプルに見えて、ものすごく精密な誘導装置なんですね…。
なぜ自然に落ちないの?
ファスナー: その通り。だが、それだけでは、私の完璧な機能性の半分しか説明できていない。
都築: 半分、ですか?
ファスナー: 本当に巧妙なのは、この対談のテーマでもある、「私がなぜ、自然に開かないか」という点だ。
都築: それです!一番聞きたかったのは!パンツのファスナーが、勝手に下がってしまっては大変なことになりますからね…。
ファスナー: フフッ。では、私の「引き手(プルタブ)」をよく見てごらん。そして、その引き手がスライダー本体と繋がっている部分だ。そこに、ごく小さな「爪」が隠されているのが見えるかね?
ファスナー(ジッパー)が下がってきてしまうのですが。 - 商品について | ジーンズ、デニム通販のEDWIN(エドウイン)公式通販オンラインモール
都築: 爪…?あ、本当だ!言われてみれば、何か突起のようなものが…!
ファスナー: その爪こそが、私の「オートマチックロック機能」の心臓部だ。引き手を、だらんと下に垂らしている状態では、この爪が、バネの力でエレメントの隙間にガチリと食い込む。これで、スライダーは完全にロックされる。
都築: ええっ、じゃあどうやって…!
ファスナー: だが、君が引き手を指でつまみ、持ち上げると、その動きと連動して爪がエレメントから離れる。ロックが解除され、スライダーは自由に動けるようになる。…どうだね?単純だが、実に合理的だろう。
都つき: すごい……。すごすぎます。引き手を「起こす」という、僕たちの無意識の動作そのものが、ロックを解除する鍵になっていたなんて…。これは、まさに工学の奇跡ですね。
絶対的王者YKK
都築: いやあ、本当に驚きました。ところで、ファスナーさん。僕、自分の服についているあなたをよく見ると、ほとんどに「YKK」という刻印があるんです。これは、どういう意味なんでしょうか?
ファスナー: よくぞ気づいた。YKKは、私の最も優秀で、世界で最も成功した日本の一族だ。君が言う通り、世界のファスナーの約半分は、このYKKが製造している。
https://www.ykk.com/corporate/group/
都築: 世界の半分!すごいシェアですね…。なぜ、そこまで強いんですか?
ファスナー: 答えは、その圧倒的な「品質」へのこだわりに尽きる。そして、その品質を生み出しているのが、彼らの「一貫生産思想」だ。
都築: 一貫生産…ですか。
ファスナー: YKKは、私(ファスナー)を作るだけではない。私を作るための「機械」そのものから、エレメントの原料となる「アルミ合金」、テープ部分の「糸」に至るまで、全てを自社で開発・製造している。
都築: えっ、機械や素材まで、全部ですか!?
ファスナー: そうだ。他社から部品を買ってきて組み立てるのではない。川上から川下まで、全てを自分たちの管理下に置くことで、寸分の狂いもない、完璧な私を安定して世に送り出せるのだ。この徹底した姿勢こそが、彼らを世界の王者に押し上げた。
都つき: 機械も、素材も、全部自社で…。すごい。まさに、日本のモノづ´くりの精神そのもの、という感じがしますね。
おわりに
ファスナー: そうだ。他社から部品を買ってきて組み立てるのではない。川上から川下まで、全てを自分たちの管理下に置くことで、寸分の狂いもない、完璧な私を安定して世に送り出せるのだ。この徹底した姿勢こそが、彼らを世界の王者に押し上げた。
都築: 機械も、素材も、全部自社で…。すごい。まさに、日本のモノづくりの精神そのもの、という感じがしますね。小さな体に、これほどまでの技術と哲学が詰め込まれていたとは…。本当に、ただただ感服しました。
ファスナー: フッ。覚えておくといい、都築のあんちゃん。派手な装飾や、奇抜な形だけがデザインではない。
ファスナー: 無駄を削ぎ落とし、目的を果たすためだけに存在する、洗練された「機能」。それ自体が、何よりも美しいのだよ。
都築: 機能性は、美しい…。心に刻んでおきます。ファスナーさん、本日は、本当にありがとうございました。
都築: 「機能性は、美しい」。発明家ファスナーの最後の言葉が、深く心に響いています。
対談の後、自分のジャケットのファスナーを、そっと撫でてみました。 務歯が噛み合う感触、スライダーに隠された小さな爪、そして「YKK」の刻印。 今まで気にも留めなかったその全てが、無駄のない、洗練された機能美の塊に見えてきて、なんだかとても愛おしくなりました。
私たちの身の回りには、静かに、しかし完璧に、その役目を果たし続けている「美しい機能」が、まだまだたくさん隠れているのかもしれません。
今日のまなび
▼金属ファスナーとコイルファスナーの違い
ジーンズなどに使われる、務歯(ギザギザの部分)が金属でできているのが「金属ファスナー」。強度が高く、重厚感があるのが特徴です。一方、パーカーやバッグなどに多いのが、務歯がナイロンやポリエステルのコイル(渦巻き)状になっている「コイルファスナー」。柔軟性があり、軽くて錆びないのが利点です。用途によって、ファスナーたちも使い分けられています。
▼「YKK」のトリビア
世界トップシェアを誇る「YKK」は、社名を「吉田工業株式会社(Yoshida Kōgyō Kabushikigaisha)」の頭文字から取っています。驚くべきは、その「一貫生産体制」。ファスナー本体だけでなく、それを作るための製造機械、更には材料のアルミ合金や糸、ダンボールまで自社で生産しています。創業者の「善の循環」という企業精神に基づき、品質を完全にコントロールすることで、世界中のアパレルブランドから絶大な信頼を得ているのです。
元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/nbcdf88d5d312 公開日: 2025-08-07 18:00
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