大の攻防

大の攻防

同じ戸棚の本に手をかざして「あっ…」みたいな感じで、 トイレの入り口で社長とばったりエンカウント。

早速、「やってしまった…」と思った。 入り口に近い手前の小便器に立ってしまった。 この状況、自分が奥まで歩き、社長に手前の小便器に立ってもらうのが良いよね?社長の時間のほうが大切なんだから。

確かに料亭の席配置とかで入り口に近いところから下手(しもて)なんていうルールはあるけれど。 別に入り口近くの小便器だって、入り口の外から覗いて見えるわけでもないし、プライバシーは確保されているから、だったら、入り口から近いほうがこの状況においては、忙しい人間、時間給がより高い人間に使っていただくべきじゃない?

自分が小便器の前に立ってみて、そう思えたけれど、じゃあ僕がなぜ、そもそも手前の小便器に立ったのか。 僕は僕なりに間違った気遣いみたいなのを、発動させてしまっていたんですよね。 要するに、「社長が個室に入るのでは?」とね。

子分がいる前で、もし社長が個室に入りづらいんだったら、僕はせめて気付かなかったふりをしようと。 だから、入り口に超近い小便器にサッと立って、社長が奥にある個室か小便器、どちらに入ったのか、僕は全く把握できない状況ですよ、という空気感を出そうと思ったんですよ。

そんな算段をしていた自分は8:2くらいで、社長は個室に入ると思っていたという目論見もあるが、見事にはずれてしまった。 やっぱり俺は気遣いができないヤツだなぁと反省する。

「いや、ちょ待てよ。社長は子分の存在を気にされて、”無理して”小便器の前に立っているんじゃないか?」 そんなことを思った。 「本当は、個室に入りたいけれど、こいつがいるから…」みたいな状況だったとしたら。

そんな予想が浮かんだ瞬間、僕は竿の水量をマックスに調整する。 この場から一刻も早く立ち去ることが、せめて自分ができる唯一の尻拭い。 (小便器の前で尻は拭わないんだけれど。) そんなこんなで、急いで、手を洗い、ハンカチを出しながら、その場を後にする僕。 これで、社長は悠々とトイレをたのしんでいただけると思った。

・・・

オフィスへの廊下をトボトボ歩いていたとき、あることに気づいてしまった。 この状況全て、社長が何も考えていないのを前提としている。 要は、ゲームで言えば、僕だけの1Pで、相手はCPだ、という。 ただ、これは相手も頭を使っているゲーム。

なにこれ、ジョンナッシュの理論かの何かですか? 要は、自分が考えていることは相手も考えているのです。 「子分は個室に入りたかったのかな?」と。

もう何をどうすべきだったのか、今でもさっぱりわからない。


元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/n35b3277746da 公開日: 2023-06-14 18:00

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