琥珀色の休息 - パブで見つけた精神的な充電方法

琥珀色の休息 - パブで見つけた精神的な充電方法

ロンドンの夕暮れ時、私は「The Queen’s Fox」の扉を押し開けた。いつもの木の香りと静かな会話の音が、一日の疲れを優しく包み込む。カウンター奥の静かなコーナー席に腰を下ろし、オリバーに目配せすると、彼は黙ってグラスとウイスキーのボトルを持ってきてくれた。

「いつもの」と言う必要もない。彼は既に分かっていた。グレンモーレンジィ 18年。琥珀色の液体が注がれる音だけで、私の心は少し落ち着いた。

「今日はどうだった、Ichi?」オリバーが穏やかに尋ねる。彼の目には、いつもの暖かさと洞察力が宿っている。

「忙しかったよ」と答えながら、グラスを手に取る。「でも、なんだか虚しい気分なんだ」

オリバーは黙って頷いた。彼は聞き上手だ。私は続けた。

「最近、ずっと考えているんだ。肉体的な休暇と精神的な休暇の違いについて」

一口ウイスキーを含む。喉を通る温かさが、言葉を促す。

「肉体を休めるのは簡単だ。寝る、ゆっくり過ごす、それだけでいい。でも、精神を本当に休めるのは…難しい」

パブの窓越しに、西の空が赤く染まっていくのが見える。ロンドンの夕暮れは、いつも心を揺さぶる。

「精神的な休暇は、何もしないことじゃない。むしろ、何かを『する』ことなんだ。日常から離れて、心を刺激すること」

グラスを軽く回しながら、氷のかすかな音を聞く。その小さな音が、思考を整理する助けになる。

「例えば、映画を見たり、音楽を聴いたり、本を読んだり。アートや建築を見に行ったり、友達と話したり、何か新しいことを学んだり…」

オリバーは静かに頷きながら、私の言葉に耳を傾けている。彼の存在が、この場所を安全な避難所にしている。

「要は、日常とは違う何かに『集中する』こと。それが精神的な休暇になるんじゃないかって」

ふと、窓の外に目をやると、行き交う人々が見える。皆、それぞれの日常に追われている。でも、その中にも小さな喜びや発見があるはずだ。

「でも、それを実践するのは難しい。ついつい、だらだらと過ごしてしまう。スマホをいじったり、meaninglessなことに時間を使ったり…」

グラスを置き、深いため息をつく。オリバーは静かに微笑んだ。

「君は今、まさに精神的な休暇を取っているんじゃないか?」彼が言った。「ここで、普段考えないことを深く考えている。それこそが、精神的な休息だと思うよ」

その言葉に、私は少し驚いた。確かに、ここでの時間は日常から離れている。深い思考に浸り、新しい視点を得ている。

「そうかもしれないね」と答えながら、少し肩の力が抜けるのを感じた。「こうして考えを整理すること自体が、精神的な休息になっているのかも」

夜の帳が降りてきて、パブの中は少しずつ賑やかになってきた。しかし、この小さなコーナーは、まるで時間が止まったかのように静かだ。

「それじゃ、もう一杯どうだ?」オリバーが優しく尋ねる。

「ああ、そうだね」と答えながら、私は少し笑みを浮かべた。「今日は、ゆっくりと『精神的な休暇』を楽しもう」

グラスが再び満たされる。琥珀色の液体が、ゆっくりと氷を包み込んでいく。その様子を見つめながら、私は思う。日々の中で、このような小さな瞬間を大切にすること。それこそが、本当の意味での「休暇」なのかもしれない。

Atogaki

肉体的な休暇と精神的な休暇には明らか違いがあると思う。肉体的な休暇は、言ってしまえば体を休めること。十分な睡眠をとったり、軽いストレッチや運動をして心地よい疲労感とともにベッドに沈み込むように眠ること。 一方で、精神的な休暇はこれとは異なる。多くの人は「休むこと」を「何もしないこと」と誤解しがちだ。しかし、ただダラダラと過ごすだけでは、真の意味での精神的な休養にはならない。 休暇を効果的に過ごすには、もっと戦略的で積極的なアプローチが必要である。つまり、何かを「する」ことが大切なのだ。休むことだって、休むことを「している」のである。 だから、精神的な休暇を取るためには、映画を見たり、音楽を聴いたり、本を読んだり、アートや建築を鑑賞したり、友人と話したり、新しいことを学んだり、特定の技能を身につけたりするのがよい。 普段とは違うものに「集中すること」が、精神的な休養をもたらす。

都築怜


元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/nf9f1108354f8 公開日: 2024-09-16 18:00

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