蝉の鳴き声
じりじりじりと、アブラゼミが鳴いている。
その声がたまに「しねしねしねしね…」と言っているように聞こえる。
自殺願望はない。
PTSDでもない。
これは心配して欲しい話ではない。
というかむしろ、心配されるような状況とは真逆のメンタルコンディションの時に限って、
そう聞こえるという話だ。
毎日朝6:00に起きて、
パパッと身支度を整えたらジムに向かうためにとりあえず外に出る。
まだ眠い体を起こすように家の前で体操をしていると、だんだんと世界の音が聞こえてくる。
鳥の声
風の音
犬を散歩している音
自転車の音
さっきまでプライベートだった自分が、
別に誰にも求められたわけでもなく、
ひと足先に、ひっそりと、パブリックな自分になろうとしている。
この気持ちよさのためだけに
僕は毎朝6:00に起きれると思える。
そして歩くよりも遅いスピードで走り始める。
副交感神経がゆるやかに交感神経に移っていく。
もっとも僕が穏やかな心持ちを感じているとき、
さっきまで遠くで鳴っていたアブラゼミの声が大きくなり、
「しねしねしねしね…」
と大合唱しているように聞こえる。
蝉がどこにいるかもわからない。
自分に言っているように聞こえないし、そうとも思えないから、
そこには確かな距離感があって、
それはそれで味わい深く聴いている。
聴こうとしている。
今日もおんなじこと言ってんなーと思いながら、
素通りするのが好きだ。