Ichi in London 17th July
Ichi in London 17th July
灰色の空が重くのしかかる日曜の朝、私はベッドの中で目を覚ました。Nakajimaが私の胸の上で丸くなっている。彼の温もりと鼓動が、この世界で唯一の確かなものに思える。窓の外では、雨がしとしとと降っている。ロンドンの典型的な天気だ。
昨日のカフェでの出来事が、まだ頭の中でぐるぐると回っている。あの若い日本人サラリーマン。彼の目に映る不安と焦りは、かつての自分を見ているようだった。彼は私に尋ねた。「フリーランスとして生きていく勇気は、どこから来たんですか?」
その質問に、即答することはできなかった。代わりに、私は彼に尋ね返した。「あなたは今の人生に満足していますか?」
彼の沈黙が、全てを物語っていた。
ベッドから起き上がり、キッチンに向かう。朝のルーチンとしてコーヒーを淹れながら、私は考え続けた。勇気?それとも無謀?フリーランスとして生きる決断をした時、本当に勇気があったのだろうか。それとも、ただ会社という檻から逃げ出したかっただけなのか。
コーヒーの香りが部屋に広がる。窓の外では、雨がやや強くなっている。Nakajimaが足元にすり寄ってきて、エサをねだる。彼に餌をやりながら、私は思う。この生活には確かに不安定さがある。でも、それ以上に自由がある。
コーヒーを片手に、書斎の窓際に立つ。雨に濡れたノッティングヒルの街並みが、ぼんやりと霞んで見える。この景色は、日々少しずつ変化している。季節が移ろうように、人生も少しずつ形を変えていく。
昨日のサラリーマンは、きっと今も悩んでいるだろう。彼の姿に、かつての自分を重ね合わせずにはいられない。私も彼のように、安定と自由の間で揺れ動いていた。そして今も、完全に揺れが止まったわけではない。
デスクに向かい、PCを開く。今日もブログの更新をしなければならない。指先がキーボードの上を漂う。何を書こうか。何を伝えられるだろうか。
そう、あの若いサラリーマンに向けて書こう。彼だけでなく、同じような悩みを抱える全ての人に向けて。
「勇気は、一瞬の決断から生まれるものではありません。それは、日々の小さな選択の積み重ねです。」
文字が画面に浮かび上がる。
「安定を求めることも、冒険を選ぶことも、どちらも正解です。大切なのは、自分の心に正直であること。そして、どちらを選んでも、そこには必ず課題があるということを受け入れること。」
雨音が、やや和らいできた。
「フリーランスの道を選んだ私にも、日々の不安や焦りはあります。でも、それと向き合うことで、少しずつ強くなれる。そして、自分の人生に対する責任を全て引き受けることで、真の自由を感じられるのです。」
Nakajimaが、デスクの上に飛び乗ってきた。彼の存在が、私に安らぎを与える。
「完璧な選択などありません。ただ、自分の選んだ道を歩み続ける覚悟があるかどうかです。その覚悟さえあれば、どんな道でも、きっと価値ある人生になるはずです。」
書き終えて、深呼吸をする。この言葉が、誰かの心に届くだろうか。誰かの背中を押すことができるだろうか。
窓の外を見ると、雨がやんでいた。薄日が差し始めている。Nakajimaを抱き上げ、彼の温もりを感じる。今日も、一歩ずつ前に進もう。未来は不確かだけど、それでも希望はある。きっと、あの若いサラリーマンの中にも、そしてこの文章を読む誰かの中にも。
Atogaki
塾講師と美のカリスマを語る人の間には似ているところがあるような気がする。どちらも、自分を泥臭く引き上げてきた経験から、人をある程度の段階まで押し上げることをサポートする仕事だ。僕はこの行為を圧倒的に肯定する。対して、神によって引き上げられたような才能を持つ人間も世には存在する。そういう人は引き上がるというよりかは単に昇っていく。例えば、美しすぎる女優が、誰かの美力を引き上げるサポートをしているのを見たことがあるだろうか、いやない。だって彼女らは、人類未到の美を探究するのに懸命になっていれば良いのだから。数学の天才もまた同様。天才なら天才で居続けることに腐心した方が良い。振り返らなくて良いのだ。今の大谷翔平はコーチを目指さなくて良い。ただし、誰かが、どこかのタイミングで、振り返って、新しい芽を拾ってやらねばならない。どの役割も重要である。僕も、振り返ることと振り返らないことを選んで、行動していきたい。
都築怜
元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/n6425d91b689d 公開日: 2024-07-17 18:00
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