もしも、頭にカマキリが乗っていたら。
**
夏になると僕はあくびする口が小さくなる。
口にセミが入ってくるのが嫌だから。
もし仮に口のなかにセミが入ってきて、驚きと共に勢いよく口を閉じようとして思わず噛み締めてしまったらどうしよう、と思うのです。
この想像は、もう僕の中で払拭できなくて、僕のあくびは非常にお上品になる。そんな話。
***
外にいる僕が頭に優しく手を置いたとき、それは頭の上にカマキリがいるかもしれないと思っています。
8-10cmくらいのまるまる太ったカマキリちゃん。
払おうと誤って叩いたらカマキリが破裂し頭が汚れてしまう。確認しなかったらカマキリを頭に乗せたまま。
だから、定期的に優しく頭を撫でてみるのです。
「貴方の頭にカマキリ乗ってますか?」
この質問をされることはきっとないでしょう。
だって、質問をしている人は、その人の頭が見えているはずだから(聞く必要がない)。
ましてや、質問された人は自分の頭を見ることができません。
「貴方の頭にカマキリ乗ってますよ」
こんな言葉を、道ゆく人に言っていただく可能性は極めて低いです。
東京は冷たい。
皆、大勢の人の視線に晒されながら孤独なのです。
だから、もしカマキリが僕の頭の上に乗っていたら、
一人で頭にカマキリを乗せて、恥を晒しながら、歩くことになるのでしょう。
少し、近くにいる人が気づいて避けながら。
あ、一人じゃないか、カマキリいるもんな。
「私の頭にカマキリ乗ってますか?」
この質問を、道ゆく人にするのはなかなかに厳しいものがあります。
不審者がられるかもしれません。
聞かれた人は、何と答えればよいか、わからなくなるかもしれませんね。
というのも、基本、頭には乗っていないものなので、
「なんでそんなことを聞くんだろう」となるからです。
要するに、意味がわからないのです。
「8って6でしたっけ?」みたいなことを聞かれて、戸惑う感じ。
そりゃ違うのは明らかけど、「なんでそんなことを聞くんだろう」と。
「私の上になんか乗ってますか?」
人に聞くとしたらこの言い方になるでしょうか。
ただ、自分ではカマキリだってわかっているんですよ?カマキリって。
ただ、人に聞くならこういう聞き方が正しいのかもしれない。
いや待てよ。
ここで「自分は何をわかっているんだろう」と変な気分になる。
自分では「カマキリだ」ってわかっているって、現に乗っていないわけで。
いやわからない。乗っているかもしれない。
「乗っているかもしれないカマキリ」を乗せているのか。
僕は可能性を乗せ続けているのです。
「なぜ貴方はカマキリを乗せてないの?」
これを聞かれた人は「私の頭にカマキリ乗ってますか?」よりびっくりすることでしょう。
「なぜ」と聞かれても...乗ってないので。みたいな感じになるでしょう。
でも、僕は乗ってるかもしれないカマキリを乗せている。
貴方はなぜカマキリを乗せていないのか。
自信満々に、ヒールでカツカツ歩く女性。
貴方はなぜ、頭にカマキリが乗っていると思わないの?と思う。
カマキリ乗ってるかもしれませんよ、と。
やはり、人は他人が気にしていないことを気にして、他人が気にしていることを気にしていないんだと思う。
元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/n87aeae36b777
公開日: 2022-05-19 17:00