俺ってやつは…。

エレベーターの扉が開くと、中に乗っていたのは元テレ東アナウンサーの森香澄さんだった。

…、
というのは冗談だが、ぱっと見、雰囲気がよく似た感じの人でした。

茶髪っぽい髪で、前髪あって、淡い色のヒラヒラしつつも、ウエストは適度に絞られてる感じのワンピースを着てる感じ。
せっかくだし、この人を、森香澄さんだと思ってみよう。
森香澄さんと同じエレベータに乗ってることにしよう。

そんな森さん(森さんじゃない)が突如振り返り、僕に話しかけてきた話。

https://note.com/reitsuzuki/m/m9427bf6d581d

そんな森さん、後ろの髪の毛がクルックル巻かれている。パーマじゃない。アイロン使って部分部分で分けてやった感じがする。

例えるなら、バネを吊り下げてるようなのがいくつかある感じ。
これはこれは、朝の準備大変でしょう。

エレベーターの扉が閉まる。

エレベーターが動き出すや否や、なんと森香澄さんが振り返り、僕の方を見て、こう言った。

「何階…ですか?」

死ぬほどびっくりした。
その人を森香澄さんだと決めつけた矢先、その人が俺に話しかけてきたんだから。
しかも輪をかけて、僕にはエレベーターで話しかけられた経験が(思いつく限りでは)なかったものですから、本当に、心臓が口から出そうだった。

いやいや、この人は森さんではない。
相手にバレないよう心の中で呼吸しながら、心臓を丁寧に奥にしまいこむ。

バカ(俺)「あ、9階です…(もう押してまっせ的な空気感を出しながら)」

森氏「あっ…(光ってる9のボタンを見て察して向き直る)」

いやぁびっくりした。
まだ、心臓がしゃっくりしてる。
多分、本物の森香澄さんに話しかけられたら、きっとこういう感じなんだろうな。

終始そわそわしていたエレベーターだった。

ちなみにこれは余談だが、
なぜ森香澄さん(森花澄さんではない)が僕に希望の階を聞いたのか、読者の皆さんも気になっていることと思う。
状況として、森さんはいわゆるエレベーターガールの位置にいて、僕はそのちょうど対極の斜め後方に陣取っていたわけですが、
恐らく彼女は自分の目の前にしか番号を押すやつがないと思ったんでしょうね。
実は、エレベーターの横の壁にも番号を押すのは取り付けてあったのです。

「チン」と音がしてエレベーターが止まる。

このとき僕はてっきり、森さんは僕を先に行かせてくれるもんだと思っていた。
お互いの場所の位置関係の感じと、「もし自分がそこにいたらそうするかな」という想定ですね。
それでも一応、お互いの近くに「開」を押すボタンはあって、森さんも僕の近くにそのボタンがあることは認知済み。

結論、以下のようなシナリオは描いていた。

一旦、僕も近くにある「開」を押しておいて、相手が譲ってきたら、それを受け入れるようにして出ようかな、と。そこで譲り合い合戦しても面倒だし。

・・・

エレベーターの扉が開く。

なんと森さん、開くや否や、なんのボタンも押さずに真っ先にエレベーターから降りたのです。

え、森さん!イメージ悪くなっちゃうよ!

いやいや、あの人は森花澄さんではないから。

でも森花澄さんでも良いか。一緒のエレベーターに乗れたというプラスを覆い尽くすほどのマイナスでは決してないだろう。
だったらいいではないか。ここはむしろ、ありがとうだ。
ありがとうと言おう。

そんな心持ちで、森さんがいないひとりぼっちのエレベーターから僕も降りた。

そこは5階だった。


元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/nf922aa1584db
公開日: 2023-07-18 18:00