とあるビストロで

自分で書いておきながら
ビストロってそういえばどういう意味なんだろう?

>ねぇ、ビストロって何?

prompt

ビストロとはフランス発祥の小さな食堂で、
レストランほど格式ばらず
カフェよりは食事が充実しており、
気軽にワインや煮込み料理を楽しめる
庶民的な店を指します。

GPT-5

なるほどね。
じゃああそこはビストロだ。

表参道19:30。
明治通りをちょいと歩くと、
看板がポツンと光っている。
そこを目印に、地下に降りていくと、
僕のお気に入りのビストロがある。

始めてお伺いしたのは4月くらい。
あれは、仕事の関係で表参道にイベントに行った帰りのこと。
その日のイベントは、チャラかった。
DJブースとかがあったりして、
大きな声で話していたら、
精神的に随分と疲れてしまった。

高鳴った心臓のクールダウンとして、
僕は1駅分、歩くことにした。
そうして
パッと目についた可愛らしい
看板に惹かれて、
フラッと入ってしまったのだ。

重い扉を開けた先、
すごく暖かかったのを覚えている。
薄暗くて、天井が低くて、ウッディな空間。
ジャズがほんのり流れていて、人の気配がない。

綺麗というよりかは雑多な空間。
お店の方の趣味のものだろうか。
おもちゃなのかアートみたいなものが所狭しと飾られている。
古めかしい時計が色々飾ってある。
どれも時間が合ってない。

というか、誰も応対してこない。
奥の方からスッと一人やってきて、
「一人?始めて?」
と聞かれて、そうだと言ったら、
「空いてる席でどうぞ」
と静かに案内された。

聞くと、
お店が地下にあること
SNS等で宣伝していないこと
で、一見さんが来るのは珍しいらしい。
というか、ちょっと前までは、
一見さんは断ってすらいたらしい。

一瞬でそのお店を僕は好きになった。
大当たりの店に出会ってしまった。

以来、何度かお伺いしてきた。
そしてこの前、初めてディナーをいただくことができた。
それまではお伺いする時間も遅く、
ワンプレートのオードブルとワインだけだった。
まぁ、そのオードブルも非常に美味しいのだけれど。
言わずもがな、ディナーも美味しかった。

先のビストロの定義にも然り、
やっぱりあの店は、ビストロなんだな。
レストランのような完璧さがない。

それは、料理が雑、とか、
味がどうとかいうことではない。
シェフ1人というなかで、
お客さんとお話をしながら、
メニューがなんとなく決まっていく遊びがあること。

そして、
料理と料理の間の時間の長さ。
オーナーとお話をしながら、
ワインを傾け、
たまにジャズに耳を傾ける。

そうしている時間が
とてつもなく幸福であり、
僕は今何品目の料理を食べているのだろう。
今は料理が終わったのか?まだ作っているのか?
全くもってわからないような時間であった。

30年。
30年間、あのお店に立ち続けているらしい。
すごいよなぁ。

僕のこれまでの人生全部の長さじゃないか。
僕には今から30年後の自分を想像することができない。
本当に想像できない。

どっかで1人でホームレスをやっているかもしれないし、
海外で、葉巻を燻らしてるかもしれない。

あのオーナーは、お店を始めたとき、
今の自分を想像していたのだろうか。