駅の改札、シンデレラがいた。

真っ白なロングスカートの女性がいた。
ロングスカートの女性は好きだ。
ひらひらしてて、気づけばどっかに行ってしまいそうな雰囲気があるから。

真っ白なロングスカートの女性が僕の前を歩いていた。

そして彼女が階段を降りた時、彼女はシンデレラになった。
本当に。

https://note.com/tsukasa_ichinose/m/m9427bf6d581d

完全なる光景に僕は目を疑いましたよ。

階段を降りるとスカートがふわっと広がるじゃない。
そのスカートの裾が階段を優しく撫でながら、でも中にある足は忙しそうに動かしている感じ。
完全に、見ている風景がシンデレラのそれなのです。

シンデレラというか、ドラマで見る風景でした、完全に。

***

結婚を迫られていやいや式場に向かう姫。
きっと、お相手は御曹司の次期社長で性格も優しい人なんですよ。
そんなに仕事もしなくて良くて、ずっと一緒にいてくれる人。

でも、本当は彼女の心は別の男性にあるんだよね。
別の男性というのは、高校を卒業して土木の仕事を毎日汗水たらしてやっている人。
ずっと働き詰めで、しかも薄給だけれど、彼には夢がある。
彼は、いつか建設会社を作って、自分の思う理想の家を作りたいと思ってて。
そんな彼に本当は彼女は心惹かれているんですよ。

それにしても彼女のお父さんなんかは、もう御曹司にぞっこん。
「喜んでうちの娘を差し上げます!」みたいな感じで。

でも、こういうパターンのとき、
お母さんだけはうっすら気付いてるんですよね。
「あなたが本当に好きな方と一緒になりなさい、それがお母さんは1番幸せなことよ」
なんていうことをちょっと言って娘を悩ますのよ。

なんやかんやで迎えた当日、
ウエディングドレスに着替えて鏡の前に立つ。
なんか私の表情浮かないな、なんて思いつつ、
ウエディングプランナーに
「とてもお似合いです」なんて言われたり、
御曹司がやってきて
「本当に綺麗だ」なんて言ってくれるもんだから、
「これで喜ばない自分も天邪鬼すぎるよな、これは十分幸せだ。受け入れよう」みたいな感じで、気持ちを立て直そうとする。

さて、いよいよ式本番。
ウエディングプランナーの方が
「さて、参りましょうか」なんて言って、
「はい」と立ち上がったタイミング。
ここで
自分の楽屋に一枚の手紙が置いてあることに彼女は気づくんですよ。
「ルームサービスかな」なんて感じで最初は目にも留めなかったんですけど、このタイミングで気づくんですよね。

「これ…」と呟く彼女、
そしたら、ウエディングプランナーの女性の方が、
「あぁ、それね。今日の朝、男性が”どうしても渡してほしい”ってお願いされたんですよ。
一応、結婚式の案内は来てなかったみたいなので、お引き取りいただきましたが、色黒で身長は高くて、ジャケットは羽織ってましたけど下は作業着でしたね、ふふふ」
みたいなことを言ってさ。

「どこにいきました!?」
「えぇと…タクシーであっちの方に…」

もう彼女は気づけば走り出しているんです。
心を体が追い越して、もう彼の元に向かってしまっている自分がいるんです。

彼はいつもの工事現場にいることはわかっているんですよ。
じゃあタクシーでどっちに向かったか聞くなよって話なんですが、そういうものなんです。

「拓哉!!!」

工事現場についた彼女がありったけの声で呼びかけます。

「ミキ…」
「もう、バカ!なんで結婚式こないのよ!」

的な、ここからは書いてる自分が恥ずかしいので、もう終わりにしますが、
そんな女の人に見えたんですよ、とにかく。

そんな話。
彼女は僕と同じ電車に乗ってどっかに消えた。


元記事URL: https://note.com/reitsuzuki/n/n161a40145ad7
公開日: 2022-08-02 17:00