傘を盗まれて取り返した話。
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皮膚科に到着、受付の手前にある傘立てに傘を置いた。
その日の患者はやけに少なかった。
僕とほぼ同じタイミングで病院に入った人がいて、その人が先に受付を済ましていた。
待合室には誰もいなかった。
つまり、診察待ちの患者は僕含めて2人ということ。
こりゃ早く診察が済む、ラッキー。
今日は土曜日の午前中。
土曜のうちに済ませるべきことを済ませている気分と相まって、なんだかお得感が増した。
したら、診察室から一人の患者が出てきた。
僕と一緒に受付を済ませた人とは別で、診察中の方がいたようだった。
それにしても物音ひとつせず、静かな診察だったな。
まぁ皮膚科なんてそんなもんか。
それはそうと、僕の前に受付を済ませた人が診察へ。
この人の診察時間、びっくりするほど短かった。
ほんとに診察されたのかな。マジで体感20秒くらいで診察室から出てきた。
あっけなく僕の番、ここまで受付済ませてから2分くらいしか経ってないように感じる。
まぁ僕も僕で診察時間は以上に短いんだけどね。
もらう薬変わらんし。
受付でお金を払う。
お財布や領収書をしまいながら、受付の手前にある傘立てに目をやる。
傘がなかった。
あれ?
傘立てにはビニール傘と、チェック柄の焦茶色の傘の2本しかない。
僕の黒い傘がなかった。
待合室にもない。
まじか。
傘立てにあったビニール傘は、受付に座っているお姉さんのものらしい。
つまり、このチェック柄の傘の持ち主が、僕の傘と間違えて持っていったのです。
似てはいないが、まぁビニール傘よりかは似ているか。
少なくとも今はビル下の薬局にいるだろうから、そこで交換しよう。
とりあえず僕は、受付の方に断りを入れて、チェック柄の傘を持って薬局に行った。
その薬局ですが、いくつかの病院のお薬を出してるところだから、多少待ち時間があるんですね。
だから、間違えて持って行っちゃった方が、もうお薬をもらって帰っている、みたいなことにはならないだろうと。
薬局に行ってみて、まず確認したのは傘立て。
僕の傘はなかった。つまり、誰かが僕のを持っている、ということ。
薬局に入り、さっと受付を済ます。
あたりを見回すと、あった。
僕の傘があった。
80過ぎくらいのおじいちゃんが大事そうに僕の傘を抱えていた。
なんだか、すごく奇妙だった。
自分の私物を誰かが当たり前のように持っている光景が。
声をかけたらめちゃくちゃ良い人だった。
薬局を出ると、もうすっかり雨は止んでいた。
自分の手元に帰ってきた傘を持ちながらの帰り道は心がとても軽かった。